<磁石の知識>
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2007/12/01 日記<磁石>
磁石
----磁石(じしゃく)とは、一般には鉄を引き寄せたり、地磁気に応答して方位を指し示す物質や機構のことを指す。
磁石は、N極とS極の2つの磁極を持っている。異なる極は引き合い、同じ極は反発しあうという性質をもつ。これらの磁極は単独で存在することはなく、磁石を半分に切っても、S極だけ、或いはN極だけの磁石にはならず、S極とN極の双方を持つ2つの小さな磁石ができる。地球そのものも磁石であり、北極地方にS極が、南極地方にN極がある。このため、方位磁石を使うと方位を知ることができる。方位磁石のN極が北を、S極が南を指し示すことで方位を知ることが出来るのである。
原理
電気と磁気の力はお互いに不可分である。これらの関係は電磁気学の基本方程式であるマクスウェルの方程式で与えられる。この方程式によると、電気を帯びた物体(電荷)を運動させると、磁気の場(磁場)が生じ、磁石としての性質を帯びることとなる。磁石の性質を持つ物質である永久磁石も、電流を流すと磁石になる電磁石も、これによって磁石としての特性が発現する。(現在、強磁性体という意味では学術的に磁石という言葉はあまり用いられない。)
永久磁石
あらゆる物質を構成している原子は原子核と電子から成る。電子は電荷を持つと同時に、スピンという性質をもつ。スピンとは電子の自転運動に相当するもので、このスピンによって電子そのものが二値性を帯びている。多くの原子は複数の電子を有している。例えば鉄原子は26個の電子を持つ。これらの電子のスピン同士はお互いを打ち消しあおうとする性質を持つが(フントの規則)、打ち消しきれずに余ったスピンがあると、原子そのものが磁石としての性質を帯びる。例えば、永久磁石を作る上で重要な物質である鉄、ニッケル、コバルトではD軌道|3d軌道と呼ばれる電子軌道に余ったスピンが存在している。多くの物質中では熱擾乱によって原子の内殻電子の向きが乱されるため、物質全体としては磁気モーメントを示さない。物質全体が強い磁気モーメントを示すためには、互いの原子間に強い原子間交換相互作用を持つ必要がある。このような物質を強磁性|強磁性体と呼ぶ。強磁性体では隣同士の原子に属する電子や伝導電子による「交換相互作用」というものを仲立ちにしてスピンをそろえている。強磁性体を加熱すると磁性を失ってしまうのは、熱擾乱エネルギーが交換相互作用エネルギー、精密に言えばここのモーメントを束ねるマグノン励起エネルギーを上回ってしまうためである。強磁性体内部はミクロスコピックに見ると「磁区」とよばれる多数の領域に分かれている。それぞれの磁区はある方向の磁気モーメントとを有しているが、それぞれ磁区の磁気モーメントがばらばらな向きを持っている消磁状態では、お互いが打ち消しあうために、全体としては磁気モーメントを持たない。ただし、一般に人為的な消磁操作を行わずに消磁状態の強磁性体を見ることは稀である。強磁性体に十分な磁界をかけて一旦すべての磁気モーメントを外部磁界と平行にすると、外部磁界をゼロにしても磁気モーメントを生じる。これを残留磁化もしくはリマネントと称する。残留磁化をゼロにするには逆方向に外部磁界を印加する必要があり、その値を保磁力という。永久磁石では最大の残留磁化Bとそのときの外部磁化の値Hの積BHmaxが性能指針としてもっぱら用いられる。
電磁石
電磁石とは、巻線|コイルに電流を流すことで磁界を生じる機構である。コイルに沿って伝導電子が回転運動することにより、
磁界を生じるのである。このコイル中に強磁性体をおくと、コイルによる生じた磁界をさらに強めることが出来る。
超伝導と磁石
鉄などとは逆に、超伝導|超伝導体に磁石を近づけると反発してしまう。超伝導体には磁場を排除しようとする性質があるためである。これによって磁石の上に超伝導体を浮上させることが出来る。これをマイスナー効果と呼ぶ。医療に用いるMRI(磁気共鳴画像法)や磁気浮上式高速鉄道では強力な磁界が必要となるが、これを実現できるような永久磁石は存在しない。また、電磁石で実現するためにはコイルに大電流を流す必要がある。しかし、銅などの低抵抗の配線材料を用いても、この電流による発熱に耐えることは出来ない。この問題を解決するのがコイルに超伝導体を用いた超伝導電磁石である。超伝導材料は電気抵抗が0であるため、大電流を流しても発熱しないのである。超伝導コイルには磁場に強い「第二種超伝導体」を用いる必要がある(第二種超伝導体についてはマイスナー効果を参照)。
磁石の歴史
古代ギリシアでは、鉄を引き寄せる石として磁石はすでに知られていた。プラトンは、その著書『イオン』にて「マグネシアの石」として磁石のことを言及している。ローマ帝国の博物学者プリニウスは著書『博物誌』にて、マグネスという羊飼いが磁石を偶然発見したと述べている。この「マグネシアの石」ないし「羊飼いマグネス」が、英語で磁石を指す言葉であるマグネット(magnet)の語源になったと考えられる。また、プリニウスの『博物誌』には、ダイヤモンドが磁石の力を妨げるという奇妙な説が述べられている。磁石に対し近代的な科学の光をあてたのは、エリザベス1世の侍医であったウイリアム・ギルバート (1540年? - 1603年)である。その著書『磁石及び磁性体ならびに大磁石としての地球の生理学』(De Magnete, Magneticisque Corporibvs,et De Magno Magnete Tellure)においてギルバートは、磁石に関する俗説や既知の現象について詳細に検証している。例えば羅針盤の指北性を論じるにあたり、球形の磁石を作製し、これに対する磁針の振舞いを観察している。この結果、地球そのものが磁石であると結論付けている。また、琥珀などが軽い羽毛などを引きつける静電引力は、磁力とは異なる現象であるとも論じている。ギルバートの実験と論証による方法論は、その後の科学に多大な影響を与えた
主な磁石の種類
天然に産出する磁石として磁鉄鉱(Fe3O4)(マグネタイト)が挙げられる。古代からよく知られている磁石、磁鉄鉱(乃至は砂鉄)と産出さてれていたのはこの酸化鉄である。現在でも砂浜で永久磁石を砂中にいれれば十分に視認することが出来る。羅針盤の指針を磁化することなどに用いられてきたが、非常に微弱な磁石である。20世紀に入ると、実用に十分な強度を有する磁石が人工的に作られるようになってきた。磁石の原料として、3d遷移元素の鉄、コバルト、ニッケルが挙げられる。単体が室温で強磁性を示すのは、これら3つの元素のみである。さらにランタノイドのサマリウム、ネオジムも磁石の原料として挙げられる。単体では強磁性を示さないが、4f軌道に余ったスピンが存在するため、これらを原料とすることで強力な磁石が実現できる。なお、4f軌道電子はスピンと共に軌道運動も磁性に寄与している。
アルニコ磁石
アルミニウム、ニッケル、コバルトなどを原料とした磁石である。20世紀半ばまで主流の磁石であったが、やがてフェライト磁石などに主役の座を奪われた。
KS鋼
1917年、本多光太郎らによって発明された磁石である。鉄、コバルト、タングステン、クロムなどを含む。
フェライト磁石
酸化物磁石の一つで、酸化鉄を主原料にして焼き固めて作る。
酸化鉄にバリウムやストロンチウムを微量加えたものを焼き、1μmほどの粒子に粉砕したものを成型し焼結する。最後に電磁石によって着磁し、フェライト磁石が出来上がる。酸化鉄を主原料としているため安価であり、様々な用途に用いられている。若葉マークに使われているゴム磁石はフェライト磁石を砕いてゴムに混ぜて固めたもの。ゴムが主成分なので容易に切断することが可能。コピー機にはゴム磁石でできたロールが使われている。
サマリウム・コバルト磁石
サマリウムとコバルトを原料としている。組成比の異なる「2-17系」と「1-5系」がある。「1-5系」は高価なサマリウムの比率が高いため、「2-17系」の登場以降あまり用いられなくなってきた。強い磁力を持ち、高い耐腐食性と良好な温度特性(200℃程度まで使用可能)を有することが特徴である。
ネオジム磁石
ネオジム、鉄、ホウ素を主成分とする希土類磁石の一つ。1984年、住友特殊金属(当時)の佐川眞人によって発明された。磁束密度が高く、強い磁力を持つ。鉄を含み錆びやすいため普通は表面に鍍金を施す。熱減磁が大きく-0.12%/K程度。60〜80℃以上にすると磁力が戻らなくなる。強磁性|キュリー点は約310℃。非常に磁力が強いため、ハードディスクやCDプレーヤー、携帯電話などに使用される。
磁石の用途
日常の電化製品でよく見かける磁石の用途として、電動機|モーターやスピーカーが挙げられる。これらは永久磁石と電磁石を用いて、電気エネルギーを回転や空気の振動といった力学的エネルギーに変換している。カセットテープ、ビデオテープ、ハードディスクといった記録メディアは磁化された向きによって情報を記録している。情報の読み出しには電磁誘導や巨大磁気抵抗(GMR)、 ごく最近になってトンネル磁気抵抗(TMR)が利用されている。電子顕微鏡の電子レンズや粒子加速器などでは、磁石は電子などの荷電粒子を狙った方向に曲げるために用いられている。また、トカマク型などの原子核融合|核融合では高温のプラズマを封じ込めるためにも用いられている。その他、磁石はリニアモーターカーの磁気浮上や、MRI|磁気共鳴画像法といった医療用途にも利用されている。
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